bcrypt、crypto-js、pbkdf2、scrypt-js はいずれもJavaScript環境でパスワードやデータのハッシュ化・暗号化を行うためのnpmパッケージですが、それぞれ異なるアルゴリズムと設計思想を持っています。bcrypt はパスワード専用のアダプティブハッシュ関数で、saltの自動管理が特徴です。crypto-js はAESやSHA-256を含む汎用暗号ライブラリで、PBKDF2などの鍵導出関数も提供します。pbkdf2 はNIST標準の鍵導出関数を実装し、Web Crypto APIと連携して非同期処理をサポートします。scrypt-js はメモリ強度が高いscryptアルゴリズムを純粋なJavaScriptで実装し、ブルートフォース攻撃への耐性を重視しています。これらのパッケージは、フロントエンドでの使用可否、同期/非同期の動作、セキュリティ特性、および実装の容易さにおいて大きく異なります。
フロントエンドアプリケーションでユーザー認証を実装する際、パスワードの安全なハッシュ化は不可欠です。しかし、ブラウザ環境では適切なアルゴリズムとライブラリの選択が重要になります。ここでは bcrypt、crypto-js、pbkdf2、scrypt-js の4つのnpmパッケージを、実際の開発者の視点から比較します。
まず、各パッケージが提供する暗号アルゴリズムの基本的な性質を確認しましょう。
bcrypt:パスワード専用に設計されたアダプティブハッシュ関数。内部でsaltを自動生成し、計算コスト(ラウンド数)を調整可能。crypto-js:汎用暗号ライブラリ。AES、SHA-256、HMACなど多数のアルゴリズムを含むが、パスワードハッシュにはPBKDF2やその他のKDF(鍵導出関数)を明示的に使う必要がある。pbkdf2:NIST標準の鍵導出関数。任意のハッシュ関数(例:SHA-256)と反復回数を指定して使用。scrypt-js:メモリ強度が高いアルゴリズム。ASICやGPUによるブルートフォース攻撃に対して特に強い。⚠️ 重要な注意点:フロントエンドでパスワードをハッシュ化するのは、通常推奨されません。サーバーサイドでハッシュ化すべきです。ただし、特定のユースケース(例:完全クライアントサイドのアプリ、オフライン認証)ではフロントエンドハッシュが必要になる場合があります。
ブラウザ環境では、長時間実行される処理がUIをフリーズさせるため、非同期処理が必須です。
bcrypt(Node.js向けのネイティブバインディング版)は、ブラウザでは動作しません。代わりに、純粋なJavaScript実装である bcryptjs を使う必要がありますが、これは同期的であり、高コスト設定ではUIをブロックします。
// bcryptjs(同期的 — UIをブロックする可能性あり)
import bcrypt from 'bcryptjs';
const salt = bcrypt.genSaltSync(10);
const hash = bcrypt.hashSync('password123', salt);
crypto-js も同期的です。PBKDF2を使用する場合も同様です。
// crypto-js(同期的)
import CryptoJS from 'crypto-js';
const salt = CryptoJS.lib.WordArray.random(128/8);
const hash = CryptoJS.PBKDF2('password123', salt, {
keySize: 256/32,
iterations: 10000
});
pbkdf2 パッケージ(node-forge 由来のもの)は、Web Crypto API を利用した非同期実装を提供します。
// pbkdf2(非同期)
import { pbkdf2 } from 'pbkdf2';
pbkdf2('password123', 'somesalt', 10000, 32, 'sha256', (err, derivedKey) => {
if (err) throw err;
console.log(derivedKey.toString('hex'));
});
// Promiseベースの使用も可能(ドキュメント参照)
scrypt-js も非同期で動作し、プログレスコールバックをサポートします。
// scrypt-js(非同期)
import scrypt from 'scrypt-js';
const password = new TextEncoder().encode('password123');
const salt = new TextEncoder().encode('somesalt');
scrypt.scrypt(password, salt, 16384, 8, 1, 32).then((key) => {
console.log(new TextDecoder().decode(key));
});
💡 結論:UIをブロックしたくないなら、
pbkdf2またはscrypt-jsを選ぶべきです。bcrypt(およびcrypto-js)は同期的で、高コスト設定ではUXを損ないます。
bcrypt / bcryptjs:saltを自動生成・埋め込み。検証時にsaltを別途保存不要。crypto-js:saltを自分で生成・保存する必要あり。pbkdf2:saltを明示的に渡す必要あり。scrypt-js:saltを明示的に渡す必要あり。// bcryptjs:saltがハッシュ内に含まれる
const hash = bcrypt.hashSync('pass', 10);
// 後で検証
bcrypt.compareSync('pass', hash); // true
// crypto-js:saltを別管理
const salt = CryptoJS.lib.WordArray.random(16);
const hash = CryptoJS.PBKDF2('pass', salt, { iterations: 10000 });
// 検証時は同じsaltが必要
bcrypt は compare メソッドで簡単に検証可能。bcrypt:ラウンド数10〜12(2024年現在)。PBKDF2:反復回数10,000以上(NIST推奨は最低10,000)。scrypt:N=16384, r=8, p=1 が一般的な起点。ただし、フロントエンドでは計算リソースが限られているため、過剰なコスト設定は避けるべきです。ユーザー体験を損なうだけでなく、DoS攻撃のベクトルにもなり得ます。
bcrypt(公式パッケージ):Node.js専用。ブラウザでは動作しない。代わりに bcryptjs を使う必要あり(重い)。crypto-js:純粋なJavaScript。古いブラウザでも動作。pbkdf2:現代のブラウザ(Web Crypto API対応)で最適化。古い環境ではポリフィルが必要。scrypt-js:純粋なJavaScript実装。Web Workerとの併用が推奨。scrypt-jscrypto-js + PBKDF2pbkdf2bcrypt(ネイティブ版)bcrypt 公式パッケージをブラウザで使おうとしないこと。動作しません。crypto-js のMD5やSHA-1をパスワードハッシュに使わないこと。これらはKDFではなく、脆弱です。pbkdf2 または scrypt-js を選びましょう。bcrypt 以外の場合)。// Web Worker内でscrypt-jsを使う例(main.js)
const worker = new Worker('hash-worker.js');
worker.postMessage({ password: '...', salt: '...' });
worker.onmessage = (e) => console.log(e.data.hash);
// hash-worker.js
importScripts('scrypt-js/umd/scrypt.js');
onmessage = (e) => {
const { password, salt } = e.data;
scrypt.scrypt(
new TextEncoder().encode(password),
new TextEncoder().encode(salt),
16384, 8, 1, 32
).then(key => postMessage({ hash: key }));
};
セキュリティとユーザーエクスペリエンスのバランスを取ることが、フロントエンド開発者の責任です。適切なツールを選び、正しく実装しましょう。
pbkdf2 パッケージはWeb Crypto APIを活用した非同期実装を提供し、UIをブロックせずに安全な鍵導出が可能です。現代のブラウザ環境で標準ベースのアプローチをとりたい場合や、サーバーとの連携前提でフロントエンドで事前ハッシュ処理が必要なケースに最適です。NIST標準に基づく信頼性と、Promise対応による使いやすさが大きなメリットです。
bcrypt 公式パッケージはNode.js環境専用であり、ブラウザでは動作しません。フロントエンドで使う場合は bcryptjs という代替パッケージが必要ですが、これは同期処理のため高コスト設定でUIをブロックします。完全クライアントサイドアプリで簡易実装が必要で、かつUIフリーズが許容できる場合にのみ検討してください。通常はサーバーサイドでの使用を想定しています。
crypto-js は軽量で古いブラウザでも動作する汎用暗号ライブラリです。PBKDF2機能を使ってパスワードハッシュ化が可能ですが、同期処理のため高コスト設定ではUIが固まります。バンドルサイズを最小限に抑えたい簡易認証システムや、オフライン用途でセキュリティ要件が中程度のケースに向いています。ただし、MD5やSHA-1など脆弱なハッシュ関数を誤って使わないよう注意が必要です。
scrypt-js はメモリ強度が高いscryptアルゴリズムを純粋なJavaScriptで実装し、非同期処理とプログレスコールバックをサポートします。完全オフラインのパスワードマネージャーや、高いセキュリティが求められるクライアントサイドアプリに最適です。Web Workerと組み合わせればUIブロッキングを完全に回避でき、ブルートフォース攻撃への耐性も高いため、セキュリティを最優先するプロジェクトで選択すべきです。
This library provides the functionality of PBKDF2 with the ability to use any supported hashing algorithm returned from crypto.getHashes()
var pbkdf2 = require('pbkdf2')
var derivedKey = pbkdf2.pbkdf2Sync('password', 'salt', 1, 32, 'sha512')
...
For more information on the API, please see the relevant Node documentation.
For high performance, use the async variant (pbkdf2.pbkdf2), not pbkdf2.pbkdf2Sync; this variant has the oppurtunity to use window.crypto.subtle when browserified.
This module is a derivative of cryptocoinjs/pbkdf2-sha256, so thanks to JP Richardson for laying the ground work.
Thank you to FangDun Cai for donating the package name on npm, if you're looking for his previous module it is located at fundon/pbkdf2.